庄内の山並みにまだうっすらと雪が残り、田園には一面の水鏡が輝いていた5月。
あれから3ヶ月が経ち、今は田植えを終え、8月になりました。
春先に田植えをした稲は、夏になると葉を増やすのをやめて穂を作り始めます。
そして、8月上旬から中旬にかけての今にしか、見ることが出来ないのが稲の花。
この時期、稲が作り出した稲穂には、「えい花」と呼ばれる小さな白い花=稲の花が付き始めます。ひとつの稲穂には約100個もの花が付くのだそう。
えい花の中に白く咲いているのがおしべ。白い塊のようなところに花粉が入ってます。
一方、めしべは花の中にいて、おしべの花粉が風に運ばれて来るのを待っています。
庄内の田園に吹き渡る山からの風が花粉を運び、受粉のお手伝いをしているんですね。
この白く清楚な稲の花。
花びらはなくて、花と言われないと分からないかもしれないほど可憐な佇まいで且つ、とても繊細な花なんです。
稲の花が咲くには日光と温度条件が必要。
強い雨や、気温が低い日は受粉に向かないので花は開きません。花を閉じたまま晴れるのを待っています。
なので、寒い日が続くと、花は咲きそびれてしまうのだそう。花粉が飛んでこないとわかる日は花を閉じ、じっと待っているなんて面白いですね。
天候に恵まれ花が咲く条件が揃った日。花は午前9時半くらいに開き始めます。
こうして、しばらくの間、白い可憐な姿を見せたのも束の間、午後2時頃には閉じています。
つまり、この時期、田んぼの散歩道を白く彩る稲の花は、意識していないと出会えないまま咲き終わってしまっていることもある珍しい花。
出会えたら幸せな気持ちになれそうですね。
稲の花は、穂先から順番に咲き始め、全部咲き終わるまでは1週間くらい。早い時期に咲いた花から枯れてこうべが垂れ、見覚えのある稲の姿に変わっていきます。
こんな小さな稲の花が、庄内の広い平野に守られてお米へと育っていく。
稲の花が咲く庄内の田園は、改めて自然の力の偉大さに想いを馳せてしまうような美しい風景です。
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